動物病院 ( 廃業前 )

その動物病院は 所謂 欲に溺れた獣医とその妻が荒稼ぎしていた病院でした。

 

近所の方も利用していましたが 兎に角 治療代が高かったと のちに噂になった程でした。

 

町にたった一軒しか無い 動物病院でした。

 

あとは 隣町に行かないと 動物病院はありませんでした。

 

気に入ったお客には 時間を裂いてでも動物たちを診察しますが 貧しい ( 子供や老人 金銭面に余裕がない等 )お客には 適当な理由を付け 診察を許否していました。

 

 

 

あの 動物病院が廃業するまでに 夫婦が飼っていた ゴールデンレトリバー1匹とラブラドールレトリバー1匹とフレンチブルドッグ1匹 が原因不明なまま 死んでしまっていました。

 

 

獣医であるのに 他の動物病院に助けを求めて 隣町にあるだけの病院を回りました。

 

でも どういう訳か?

診察に入る頃には どの犬も 元気になり おかしな所は何処にも見当たらない という事ばかり 起こっていて 獣医は 3匹の犬達を次から 病院に連れて行く事をやめました。

 

すると 獣医の思いとは裏腹に 犬達は 次から次へと 死んでしまいました。

 

その頃には あの女の子と黒猫の事など すっかり忘れていた 夫婦は なんで可愛がっていた 自分達の犬が死んでしまったのか?原因も分からずただ 悲しみに包まれただけでした。

 

そして 院内を歩き回っていた 犬達の姿が見えなくなる頃には 客足も少なくなり 自分達 ( 夫婦 )で飼っていた犬の命さえ救えない病院と 囁かれはじめます。

 

動物病院が そこしか無いからと 訪ねる人も いました が 深刻な病でも無いのに 具合が悪くなり 他の動物病院へ 駆け込む時には 手の施しようが無いと言われたり 切らなくていい 所をあの病院で 切られ 歩けなくなってしまった犬もいました。

 

全ての事が メチャクチャになり 獣医夫婦は 頭を抱える事しか出来なくなりました。

 

そんな時 あの時 女の子に声を掛けたおじさんが病院に猫を連れていきました。

もう かなり年を取った 老猫でした。

普段なら 理由を付けて 追い返していた獣医でしたが 老猫を診察してくれました。

 

そして おじさんに もう寿命が少ない事を告げましたが おじさんは その事を知っていました。

 

会計を済ませ 帰り際に おじさんは 夫婦に向かい 言いました。

 

「どうしてあの時 女の子が連れていた猫を診てやれなかったのか?」と……

 

しかし獣医夫婦は 思い出せませんでした。

 

「猫を抱えて 泣きながら ここと家を往復する姿を この近辺やこの前の道を走る車のドライバーが何人も見てた あの子だよ?忘れたのか?」 とおじさんは 夫婦に言いました。

 

そこで 漸く 思い出すのです。

 

あの女の子と黒猫の事を……しかし 分かったからとどうなる訳でもありません。

 

黒猫は死んでしまったのだから……。

 

あの時のやり取りを思い出し 獣医は 初めて気付きます。酷い言い方をしていた事。 酷い仕打ちをしていた事。でも 獣医夫婦は 一瞬だけ そう思っただけで おじさんが 帰った後に 二人であの女の子と黒猫が来てから 病院の経営に支障が出てきた事を思い出し 腹が立ちました。

 

 

自分達の可愛がっていた 犬達もいなくなったのは 全て あの女の子と黒猫のせいだと。

 

そして 噂されている事も客足が減った事も 全部あの女の子の仕業なんだと 思い込みました。

 

 

猫が鳴きます。病院の中に響きます。夫婦で探しますが 見当たりません。

すると 裏口辺りで 黒い人影が動くのが見えました。

 

獣医は 急いで ドアを開けますが 誰もいません。道路に出て左右を見ますが 人の姿はありませんでした。

 

夫婦は あの女の子の仕業だと あの女の子が住む家に行きました。

インターホンを鳴らしますが 誰も出てきません。きっと 仕事に行ってるのでしょう。女の子は 学校かも知れません。

 

獣医は悔しそうな顔をして 二人で帰って行きました。

すると 走る車の中で か細い猫の鳴き声が聞こえた気がしました。

それと……女の子の笑い声が聞こえた気がしました……

 

少し 気味悪く 思いましたが それでも 何度も女の子の家を訪ねました。

しかし いつも留守で誰もいません。

 

そんな日々が続いて2週間が過ぎた頃 獣医は友人と ゴルフに出掛け 妻もショッピングに出掛けました。

 

その帰り道。

久しぶりの友人との再会で 話に花が咲き 気が付くと アルコールをたくさん飲んでいたので 妻に迎えに来るように頼みました。

 

妻は 夫を迎えに行き 帰路に着きます。

その途中で あの女の子の家の前を通り掛かります。夫に ゆっくり走れ と言われたので 女の子の家の前を低速で 家の方を見ながら 走っていると 車に何かが当たり ゴンッと音を立てた後 何かにタイヤが乗り上げました。

 

二人とも血の気が引き すぐ 車道に出て車の下を確認しましたが何もありませんでした。

 

そのまま 二人は家に帰りました。

 

病院は 営業していても お客さんは来ません。もう 隣町の動物病院にも 噂が流れていました。

 

呪われてるとか 祟りだとか悪い噂ばかりが流れて 誰も寄り付かなくなりました。

 

そのうち 営業困難な状態になり 等々 廃業となってしまいました。

 

 

 

獣医夫婦の怒りの矛先は あの女の子に向いていました。

一言文句を言ってやらないと気がすまないと 何度も女の子の家を訪ねて 漸く 母親と会えました。

 

そして 獣医夫婦が動物病院の名前を出すと 母親は 黙って 家の中に 夫婦を入れました。

 

その部屋には お香の匂いが漂っていました。

 

部屋の中には 1匹の子猫がいました。

ケガをしている様で お腹に腹帯を巻いていました。夫婦はそんな猫にチラッと目をやっただけでした。

 

母親に通され 居間に行くと 小さな骨壺が二つ並んで置かれた 祭壇がありました。

夫婦はその祭壇に飾られた写真を見て 驚きました。1つは あの黒猫のもの もう1つはあの女の子のものでした。

 

 

 

そして 母親が静かに話し出しました。

 

「 あの子は 動物がとても 好きな子でした。小さい時に拾ってきた 黒猫を弟の様に可愛がっていました。あの時は 丁度 仕事が忙しく 休みが取れなくて 猫が具合悪そうだからと 娘は学校を休みました。病院に連れて行くといってたので ちゃんと 診てもらえるものだと 思っていました。娘の父親が事故で亡くなってから 色々 お手伝いをしてくれてて その度に お駄賃をあげて …娘は使わず 貯金していました。良くテレビで動物病院の番組を見ていましたから 治療代が高額な事も知っていました。だから 猫が具合悪くなった時に 使うんだって………お菓子も買わずに 貯めていたんです。何故?診てくれなかったんですか?子供だったからですか?娘は必死に頼んだそうじゃないですか !! 泣きじゃくって帰って来て泣きつかれて寝てしまった時も 猫を気遣って 余り寝てなかったんですよ…幾ら寝なさいと言っても聞かなかった位 娘は 本当に 猫を大切に思っていました。それなのに…あなた方は !! あんな小さい娘に猫を放置したら死ぬとか 寒くて猫が震えてると思ってバスタオルで包んで 連れていった時 貴方 何て言ったか覚えていますか ?! 貴方 うちの娘に向かって バスタオルで包まれた猫を見て 死んだ?と言ったそうじゃないですか !! あなた方は何様ですか?結局 別の動物病院に連れて行った時は もう手の施しようが無いと言われました。あと 2日早ければって‼ 2日前って娘が貴方の病院に行った時ですよね?あの時診てくれてれば 猫も娘も死なずに済んだのに……貴方達が 殺したんです…!! 」

 

そう話した後 母親は泣き崩れました。

 

夫婦は黙って俯いていました。

でも 夫は 思い出していました。遠い昔 同じ様に 猫を拾い 育てていた時の事を その猫が死んだ時の悲しさと何も出来なかった自分を憎んだ事も…だから 獣医になろうと思った事も…思い出し 俯いたまま 泣きました。

 

妻も もう少し気遣ってやれば良かったと 肩を落とし 涙を流していました。

 

部屋の中にいた 猫が 母親の元へ スリ寄って来ます。泣かないで…と言ってる様でした。

 

夫婦の怒りは完全に消えてなくなり 逆に自分達の行為を恥じて 何度も何度も 母親に頭を下げ謝りました。

 

すると 猫が二人の前 ( テーブルの上 )にチョコンっと座ると ジーーーーッと見て暫くすると

ニャンと鳴き 母親の膝に飛び乗り ゴロゴロと喉を鳴らして座りました。

 

まるで

 

夫婦の姿を見て 猫が全てを見透かした感じで 二人を許す と鳴いた様に見えました。

 

 

 

 

その後 動物病院は 廃業となり 夫婦は 何処かに引っ越して行きました。

 

 

 

 

女の子は 黒猫が死んでしまって 2日後に 車に轢かれ 動けなくなってた子猫を助けに行き 車に跳ねられ 亡くなってしまいました。

 

救急車に乗せられる時 女の子は 「あの子を助けて 助けてあげて…」と何度も繰り返し言っていたので 救急車に乗せ 病院の近くにあった動物病院に預けて助かった小さな命が 女の子の形見となりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その猫は 茶色い虎模様の大きな猫に育ち 病気1つせずに 今も 元気に生き続けています。

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