生きてる

私の実家はお寺です、お寺と言っても私や私の両親である住職の父や母は特別何かしら霊的な物を感じたりするといった特別な力が有るわけではない普通のお寺でした(普通のお寺って言うと何か変ですね、まあ特別霊媒的な事とかをするわけでは無いみたいな?)

 

そんな家のお寺では代々から伝わる物で「遺品供養」と言うものをしていまして、遺品供養とは処分に困った例えば何かお経が書かれた掛け軸やら、数珠とか使い古されたお経本やら…捨てるに捨てれない、そういった物を預かって供養して、お焚き上げするという物でした

 

だから家のお寺には昔からそんな沢山の人から供養のお願いをされた様々な遺品、早くに亡くなった子供のおもちゃだとか、亡くなったお爺さんの愛用していた着物とか…何かしら念みたいな物を感じそうな様々な種類の物が倉庫に保管されていて

 

次回の遺品供養のお務めまで管理されていました

 

そんな遺品供養なんですが、ある日私がお寺に留守番をしていた時でした、日曜日の昼間にある一人のお婆ちゃんがやって来て

 

「私は先が長くなくて、もーいつ死ぬかも解らないで、残った家族に迷惑掛けたくなくてね、この子をお宅の遺品供養に回してはくれませんか」

 

とお婆ちゃんは私に一抹人形を預けてきました、おかっぱにそのお婆ちゃんが手入れをしていたのか新品の様に綺麗ではあるけど、どこか年期も感じさせる高そうな物でした

 

「こんな立派な人形を供養してしまうんですか?これは飾っておくとかした方が…」そう私がお婆ちゃんに言うと

 

「いやいやだめだめ、その子はちょっと…他とは違ってね…私が死んでから何仕出かすか解ったもんじゃないで、供養しておいて下さい」と、何やら意味深で…気味の悪い事を言うのでした

 

私もそれに了解して、人形を預かって、倉庫に直ぐ様保管しました

 

それから年に数回ある遺品供養のお務めの日になり、倉庫に保管されていた遺品の数々を祭壇に奉り供養のお経が読み上げられ、それからお焚き上げになりました

 

沢山の遺品を住職である父がお経を読みながら次々に焚き火の中で燃やしていき、私と母で遺品が入った段ボールを父に預け、遺品が燃やし終えて空になった段ボールを預り畳む流れ作業をしていました

 

私が遺品の入った段ボールを父に渡そうとしたとき、段ボールの中に、そのお婆ちゃんから預かった一抹人形が入っていた事に気が付きました

 

私は一瞬ビクッとなりましたが、すぐに父に段ボールを渡してしまい、父は段ボールから遺品を手に取りまた一つ一つを燃やしていく、その時父がその人形を手に取り焚き火に入れ込むのを私は見届け

 

「これであの不気味な人形も供養されたな」と一安心しました

 

 

 

 

それから半月が経った頃でした、遺品供養も無事に終わり私自身もあの人形の事とかすっかり忘れていた頃でした

 

その日寺に二人の夫婦がやって来て、「住職と話をしたい」と、何やら重々しい雰囲気で、私は父にお客さんが来たと伝え、二人を客間に通し

 

それから住職と夫婦が何やら話をしていた、私はお茶出しをした後に、部屋の隅で話を聞いていました

 

 

夫婦の旦那「半月くらい前に、家のお袋がお寺さんに何か…お願いに来たと思うんですが」

 

そう言うので、私はあのお婆ちゃんの事だと気が付き

 

「あ…遺品供養のお願いに来られましたね、私が受付をしました」

 

そう答えると、私の父が「そのお母様がどうかされたんですか?」と訪ねると、夫婦の奥さんが答えた

 

奥さん「それが…半月前にここのお寺に来てから、主人のお母さんの様子がおかしくなって…

 

日中、ある木箱…でしょうか…その木箱を異様に大切そうにしていて、食事や寝るときや…はたまたお風呂に入るときまで大切そうに持ち続けていて

 

私達がそれを止めさせようとしたら凄まじい剣幕で「この子は生きてるんだ、やっぱり私が死ぬまで側に居てあげなきゃ駄目だったんだ」って怒鳴り散らして

 

一体全体何の事だか旦那も私も解らなくて…それから間もなく、お母さんは亡くなりました」

 

旦那「それで…亡くなった後に、あのお袋が凄く大切そうにしていた箱なんですが、生前お袋が異常に大切そうにしていたから…

 

気になり私達で中を確認してみたんです

 

…それを住職様にも見ていただきたくて、これをお袋は「生きてるんだ」なんて言って叫んでたんですが…何か心当たりはありませんか…?」

 

 

そう旦那さんは木箱を取りだし、蓋を開けて私と父に中身を見せた

 

 

 

その瞬間、最初は何がなんだか解らなかったが直ぐに何かが解った

 

 

 

 

 

白い蝋の塊と黒い糸のような物が沢山絡まり、赤色の布も混ざっていて、あちこち焦げた後のある塊

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、あのとき亡くなったお婆ちゃんから私が預かって、遺品供養の時に父が燃やした所をハッキリと見ていた、あの“人形だったもの”でした

 

それを何故かお婆ちゃんは箱に詰めて大切そうにしていたと、一体全体どういう事なのか、まさかお婆ちゃんが遺品供養の後に燃やした焚き火の後から回収してきたとか?

 

それはあり得ない、何故かって燃やした遺品に焼け残りは無いか毎回チェックしている、あの日三人で焼け跡をチェックしたがこんな塊は見ていない

 

と言うことは、確かにあの時に燃やしきっていた筈なのだ

 

だったら…これは

 

 

 

 

そう思案していると、旦那さんが言った

 

 

 

 

 

 

「…半月前に、お袋が様子がおかしくなった時は…この塊が入った箱を大切そうに持ち始めた時は…お袋はこんな事を口走ってました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生きてるんだ、生きてたからまた“帰って来てしまった”って」

 

 

 

 

 

 

私はそれを聞いてゾワッとした

 

 

 

旦那さんが言うには、お婆ちゃんはあの人形は帰って来たと語ったそうだ

 

 

 

 

 

 

 

結局その人形の塊は再び預り遺品供養することに、次は確実に燃やしきり、あれからその夫婦は何事もなかった

らしいが

 

 

 

未だに私は不思議でなりません

 

 

あの人形はなんだったのか

 

 

お婆ちゃんはあの人形と何があったのか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“生きてる”って、一体どう言う意味だったのか?

 

 

私が30年くらい生きてきた中で、多分一番奇妙な出来事でした

最新情報をチェックしよう!

長編の最新記事8件

You cannot copy content of this page