私の家族は土木関係の会社を経営している父と母、そして妹二人の5人家族です。
もう、かれこれ20年前になりますが、私が小学生の時に家族旅行に行った時の話です。
自宅(九州の田舎)から旅行の目的地までは高速道路や大きな国道が通っている為、普段はそちらを通るのですが、その時は父が今度する仕事の現場を見たいということで、遠回りになりますが、その現場を通る片側1車線のどこにでもあるような下道を行くことになりました。その下道には1ヶ所だけ車同士が離合出来ないような全長約300~400mのトンネルがあります。
とはいえ、あまり使用されていないことやトンネルの入口が見渡せることから、車がそれぞれの入口から2台進入してくることはありません。
そのトンネルに差し掛かった時に父が、「このトンネルは狭いから今隣に別のトンネルを作ってるんだよ。後、数ヵ月で完成かな?」と言いました。
確かにトンネルに入る前に、工事してたのをを見た様な気がするな…と思いましたが、あまり気に止めていませんでした。
その後、新しいトンネルは完成。
元々使用してない道路であるということと新しいトンネルが完成したことで、古い狭いトンネルの存在を思い出すことはなく、私は地元の大学に通う大学生になっていました。
そんな中、ある日、同級生の友達3人(仮にA、B、Cとします。)で独り暮らしのCの部屋で話していると、そのトンネルが話が不意に出ました。
A「なあ、今は使われていないけど、○○にある旧トンネルって知ってる?」
B「何それ?」
C「そこの道通ると、トンネル通るけど、そのトンネル?」
私「いや、旧トンネルだろ?俺たちが小学生の時に新しいトンネルが出来て、旧トンネルに続く道の入り口にはガードレールで車止めが出来ていて、車じゃ通れないよ!」
A「そうそう。あのトンネルを閉じて、新しいトンネルが出来た理由って知ってる?」
私「狭いからだろ?古かったし…」
A「それがさ、違う理由があるみたいなんだよ。」
B「何々?」
A「実はね、真夜中にそのトンネルを通った車がこんな時間に誰もいないだろうってことで、かなり飛ばして運転してたんだ。しかし、運悪くそのトンネルを歩いていた赤ちゃんを抱いた女の人がいて、避けきれず、そのまま………でも、その車は止まらずに逃げてしまって、その後そのトンネルにはその時間には出るらしいよ!」
C「おお…こえー。」
私「いや、おかしくね?」
B「何が?」
私「まず、この中でそのトンネルに一番近かった俺がその噂を知らない。特に親父は土木関係の社長だぜ?そんな噂あれば必ず耳に入る。次に、そのトンネルから一番近い民家がどこにあると思う?車でも15分以上はかかるような場所だぜ。絶対に人が歩いているはずがない。ましてや、真夜中に、赤ちゃんを連れて歩くなんて考えられない。最後にその車、誰が見たの?こんな時間に誰もいないだろうとか、かなり飛ばしていたとか、本人が話してまわってるの?ってことで、総合的に考えて後付けの噂だぜ。絶対。」
B「そう言われるとそうだね。」
C「だったら試してみない?」
A「試すって?」
C「もちろん、その場所に行ってみるんだよ。」
B「いつ?」
C「今日に決まってるだろ。」
俺「はあ?今、夜の8時だぜ。そこに付くの2時間半はかかるし!」
C「怖いの?」
俺「いや、怖いとか怖くないとかの問題じゃねえだろ?」
A「だったら、何の問題なんだよ笑」
俺「考えてみてくれ。」
C「何を?呪いとかそんなん?」
俺「………この中で車持ってる人は誰だ?」
ABC「………」
そうです。4人の中で車を持ってるのは私だけだったのです。
とはいえ、一度火の付いた好奇心を押さえられるはずもなく、4人でそのトンネルまで行くことになりました。
行きの車の中で、私は唯一過去にそのトンネルを通ったことのあることや、幽霊を全く信じていないので行ってもつまらないということ、万一何かが起きたときにすぐに逃げ出せる為に車に待機してて欲しいなどの理由から、私は車で待機する役となりました。
そして、車で行けるところのガードレールのところまで行った時、時刻はもう夜の11時…
辺りは真っ暗で車のライトが当たってるところ以外見えません。
トンネルの入り口もここからじゃ見えなくなっています。
そんな中、Cが切り出します。
C「あのさ、その幽霊が出る真夜中って何時なの?」
A「そこまでは知らない…。」
C「はあ?じゃあ、来た意味なくね?」
A「ごめん…。」
B「まあまあ。せっかく来たんだし行こうぜ!」
Bがなだめ、3人が車を降ります。
そのまま3人はトンネルの方に歩いて行きました。
私は幽霊の存在など信じてはいませんでしたが、さすがに真っ暗な中で1人待つのは心細かったです。
気を紛らわす為に携帯のゲームをしたり、車の音楽を聞いて3人を持っていました。
30分くらい経った時でしょうか。3人が暗闇の中から姿を現しました。
車の中に迎え入れ、「どうだった?」と聞くと、
A「トンネルを通って向こうの出口が見えたから引き返してきた。暗くて怖いだけで、全然何も起きないの。」
B「そうそう。やっぱ、後付けの嘘じゃねえ?」
C「拍子抜けもいいとこ。てか、A、今度時間まで調べててくれよ。」
などと、たわいもない話をしながら、再度来た道を2時間半かけて帰って行きました。
それから2週間くらい経った時、再度Cの部屋で4人で集まって飲み会をしていました。
すると、タイミングを見計らったようにAが切り出します。
A「なあ、この前のトンネルのことなんだけど。」
B「ああ。何も出なかったけど、今思えば怖いよね。真っ暗だったし。よく入ったなあ。って後から思ったよ。」
A「だよね。でも、その後、ちゃんと幽霊が出る時間帯を聞いてみたんだ。」
私「まじで?てか、その話始めたの誰なの?」
A「地元の先輩。」
C「お前があのトンネルから一番遠いところにすんでるじゃん笑。何で、その地元の先輩が知ってるわけ笑。」
A「知らねーよ。」
私「で、何時なの?」
A「真夜中の2時らしい。」
私「あー。ありきたりな時間。」
A「ちゃかすなって!」
私「でも、今日は行かねーよ。お酒飲んでるし!」
A「分かってるよ!でも、今度行ってみたくね?」
C「いつ?」
A「今度の〇曜日は?」
私「ごめん。その日は彼女と旅行行く約束してる無理。」
C「だったら、車ねーから無理じゃん。」
A「大丈夫。家から車借りてくるから。」
B「ごめん。俺はパス。」
C「どうして?」
B「この前は勢いで行ったけど、よく考えたら怖い。行きたくない。」
A「そんなこと言わずにさ!」
B「無理!」
C「しょうがねえな。じゃあ、俺だけ付き合ってやるよ!」
A「ありがとう。」
私「てか、そこまでして何でそのトンネルに行きたいの?他にも近いところに心霊スポットなんかたくさんあるじゃん。」
A「そういうところはもうネットで書いてあるじゃん。俺は新しい心霊スポットを発掘してネットにアップしたいの!今度はデジカメも持って行くぞ!」
C「それじゃ、また連絡を取り合おう!」
Cがそう言うとその話題はそこで終わった。
その約束の日には、私は彼女と旅行ということもありそのことはすっかり忘れていた。
翌日、そんな私にCからメールが入る。
C【Aから連絡来てないか?】
旅行に行ってる私に連絡するはずがないだろう。とは思ったものの、それは言わずに返信した。
私【来てないよ!なんかあった?】
C【いや、来てなかったらいいんだ。ごめん。】
トンネルに行くということも忘れていた私はそのメールを気に留めることもなく、旅行を続けた。
その旅行が終わり、大学に顔を出すと、AとBが駆け寄ってくる。
真剣な顔をして切り出した。
B「Aと連絡が付かない。」
C「大学にも顔出さないし、携帯も通じない。」
私「なんか、実家で親戚に不幸か何かあったんじゃない?」
C「いや、でも、あのトンネルに行ってから、連絡が通じないんだ。」
ここでやっとトンネルのことを思い出した。
私「でも、C、お前一緒に行ったんだから、その時の状況は?」
C「それがさ、当日つい眠さに負けて寝てたらさ、約束の時間を超えていたんだよ。」
私「はあ?かわいそうに。」
C「だろ?電話とかメールとかめっちゃ来てたんだけどさ。特に最後のメール見てくれよ。」
A【もしかして寝てる?約束の時間をとっくに過ぎてるので、もう一人で行くね!写真を撮って見せてやるよ!お楽しみに!】
C「次の日、起きた後にすぐに詫びの電話をしたんだけど、携帯の電源入ってなくてさ。メールを入れたんだけど返信もない。困って、お前やBに連絡来てないか聞いた訳。」
B「俺にも連絡来てないけど、お前にも来てないんだろ?」
私「ああ。来てない。来てないけど心配するなよ。そのトンネルで心霊現象なんか、本当に聞いたことないって笑」
そうは言ったものの心の中では少し不安はよぎった。
CとBはそれからも周りの友達にAの行方を聞いたが、足取りが掴めず・・・。
ある日、大学の教授からAが休学すると親御さんから連絡あったとの話を聞いた。
私とCとBはその話を聞いてAが無事でいるんだろうということにほっとした。
その後、Aはそのまま大学を中退し、私たちは大学を卒業した。
卒業後、数年民間企業で務めた私に父から連絡があった。
「俺ももう年だから、今のうちにお前に会社を譲っておきたい。帰ってこい。」
もう、私は30歳になっていた。
私が父の会社に入って、半年くらい経ったある日、例のトンネルがあった道路を通る現場をすることになった。
従業員の人(年齢40歳)と私の2人で車に乗って現場に向かっている途中、新しいトンネルを通った時に話を切り出してみた。
私「このトンネルが出来る前に使用してた旧トンネル知ってます?」
従業員「知ってるよ。昔は通ってたしね。」
私「幽霊が出るって聞いたことあります?」
従業員「幽霊?そんなの聞いたことないな。てか、今、トンネルの入り口はコンクリートで固めてあって入れないようになってるしね。」
私「そうなんですね!」
従業員「そうそう。俺が大学の時だったかな。危ないということで、入口を塗り固めたんだ。」
私「えっ?大学の時にですか?」
従業員「そうそう。新しいトンネルが出来てすぐだったはず。」
私「そうですか・・・。」
従業員「どうかしたの?」
私「いえ・・・。初耳だったので。」
従業員の人が大学時代には入口が固めてあったとのこと。ということは、私が大学の時には中に入れるはずがない。
3人が怖くなってトンネルの中に入らずUターンしてきたのか。
通れるはずのないトンネルを通ったのか。
もし、そのトンネルの出口を抜けていたら・・・。
Aが1人で行った後、音信不通となったのは何故なのか。
出口を抜けてしまったのか・・・。
色々なことが頭を過りましたが、今だに真実は分かりません。