覗く目

私は独身の頃、よく通っていたスナックが ありました。

そのスナックで友人がアルバイトをしていたのが

通うキッカケだったのですが、20年以上 経った今でも

ママとの交流は続いています。

 

 

 

結婚、子育てなどで一時は年賀状だけの

やり取りになった時期も ありましたが

子育てが一段落してから再び、交流が

始まりました。

とは言っても家庭のある主婦なので

昼間にランチや お茶を楽しむといった

付き合いですが…

 

 

 

友人のYは結婚を機に地方へ移り住む事に

なったのですが、お互いの子供達が中学へ進むと

部活やら塾などで帰宅時間も遅くなったので

Yは2~3ヶ月に一度は遊びに来るようになりました。

 

 

 

 

 

そんな ある時、どちらからともなく

 

「ママに会いたいね」という話になった。

 

 

 

ママには子供が居なかった為、私達の事を

実の子供のように可愛がってくれました。

よく 相談にも乗ってもらっていました。

善は急げとばかりに早速、ママに連絡を取り

日程を決めました。

 

 

 

 

 

久し振りに三人で会い、話は大いに盛り上がりました。

食事を終え お茶をしてる時、Yがママに

 

「何か面白い話は無いですか?」と振った。

 

 

 

 

この “面白い話” というのは “笑える話” ではなく

“怖い” とか “奇妙な” といった意味です。

というのも、ママには何かを感じ取る能力が あり

ママに助言され 難を逃れたという常連客も結構、

居たのです。

 

 

 

 

「まあ、大きいのから小さいのまで

いろいろ あったけど…」と前置きしながら

ある男性客(Aさん)の話をしてくれました。

 

 

 

Aさんは ある日、一人で来店したそうです。

酔っているようには見えなかったそうですが

どこかフワフワしたような 心ここに在らず…

そんな感じだったそうです。

 

 

 

初めての客であるAさんに おしぼりと

お通しを出すと そこでAさんはハッと

我に返り

 

 

「あぁ… ここは飲み屋だったんですね…」と

まるで、意識せずに来てしまったような

口振りだったそうです。

 

ママが

「お食事をご希望でしたか?」と訊ねると

「いえ、こちらで結構です。」と言って

水割りを注文したそうです。

 

 

 

 

高級そうなスーツにブランドものの腕時計…

身なりはキチッとしているもののママは何故か

不穏な空気を感じたそうです。

 

 

 

 

「ちょっと私の手には負えないな…」

 

そう思ったママはスナックを経営している

ママ仲間(Mさん)にSOSを出したそうです。

 

 

類は友を呼ぶ?…

Mさんもママと同じく ご夫婦でスナックを

経営されていて、霊感ママと呼ばれている方でした。

私は面識は ありませんでしたが、話だけは

聞いた事のある ママさんです。

 

 

 

 

Mさんは、ママからのSOSで お店をご主人に任せ

すぐに来てくれたそうです。

 

 

 

 

お店に入ってきたMさんを一目 見てAさんは

 

「ほぉ~ あんたがねぇ~」

「ところで、あんたに勝てるのかね? ふふふ…」

と不敵な笑みを浮かべたそうです。

 

 

酔っているのとは明らかに違い 何かに

取り憑かれているのがママにも分かったそうです。

 

 

 

 

奥には仮眠が取れる個室が あり、Mさんは

そこにAさんを連れて入ったそうです。

 

 

 

小一時間ほどして二人は出てきたそうですが

その時のAさんは別人のように変わっていて

もう不穏な空気は感じられなかったそうです。

 

 

 

バツの悪そうな顔でママとマスターに

 

「ご迷惑をおかけしました」と深々と頭を下げ

帰って行かれたそうです。

 

 

 

 

以下、ママがMさんから聞かされた話です。

 

 

 

個室に入るとAさんは急に上着を脱ぎ

Yシャツをめくり上げニヤニヤしながら

両腕を見せてきたそうです。

 

 

 

「…」

 

 

Mさんは全身に鳥肌が立ち絶句したそうです。

 

 

 

Aさんの両腕は 瘡蓋だらけで、一つ一つの瘡蓋から

“目が覗いていた” そうです。

 

 

その目は瘡蓋の大きさで 直径は1cmあるか

ないかの小さな目だったそうですが、明らかに

“人間の目” だったそうです。

 

 

 

 

Mさんは、まず、Aさんの話を聞くことにしたそうです。

 

 

「その目は、いつから現れたのか?」

「病院には行ったのか?」

「原因に心当たりは無いか?」など幾つか

質問したそうです。

 

 

 

以下、Aさんの話。

 

 

 

目が現れたのは3ヶ月ほど前からで 初めは

ただの小さな瘡蓋だったそうです。

“寝ている間に引っ掻いたんだろう” くらいに

思っていたそうですが、気付くと瘡蓋は

徐々に増えていったそうです。

 

 

そのうち、少し大きめの瘡蓋から

“目が覗いていること” に気付いたそうです。

驚いたAさんは、瘡蓋を剥がしたそうです。

 

 

しかし、日に日に瘡蓋は増えていき、

どの瘡蓋からも目が覗いていたそうです。

あまりにも不気味で不可解だった為、

病院には行けないでいたそうです。

 

 

 

思い当たる節…

 

 

 

Aさんは最初、言いづらそうにしていたそうですが

その時 Mさんは、ある変化に気付いたそうです。

 

 

瘡蓋がグニャグニャと よじれるように動き始め

目が かき消されそうになっていたそうです。

 

 

“よし!イケる!”

 

 

そう思ったMさんは、Aさんに優しく諭すように

「大丈夫。ちゃんと話して聞かせて」と言うと

Aさんは、やっと重い口を開いたそうです。

 

 

 

原因はAさんが勤める会社に あったようです。

ここでは詳細は書けませんが(すいません)、

何やら詐欺まがいの事をしていたそうです。

 

 

重役のポストに就いていたAさんは、顧客に

申し訳ない気持ちで いっぱいだったそうですが

社長に逆らう事も出来ず、毎日毎日、葛藤していた

そうです。

 

 

 

そして、最後にAさんは

「もう、こんな生活には終止符を打ちます。」

と言い、内部告発する事を決心したそうです。

 

 

 

 

 

「腕、見てみて!」

 

 

 

なんと、Aさんの腕には瘡蓋は残っていたものの

“目は消えていた” そうです。

 

 

 

 

 

ところで、思ったより早くケリが着いた事を

疑問に思ったママはMさんに訊ねたそうです。

 

 

 

Mさん曰く、

Aさんは本来、真面目な人で ある事。

「このままではイケない…」と本能が

働いたのだろうと。

それで ここに辿り着いたと言ったそうです。

 

 

 

ママ曰く、

「だったら初めから、Mママの所に行けば良かったのに。」

 

 

Mさん、

「たぶん、私だったら、追い返してた。」

「アナタからの頼みだから引き受けたのよ。」

「でも、助かったわ。Aさん本人に助かりたいっていう

気持ちが あったのね。」

「特別な事なんて必要無かったわ。顧客の恨みや憎しみも

会社に向いていただけ。」

「この人(Aさん)なら、なんとかしてくれる。」

「そういう念だったみたい。」

「結局、Aさんは そういった念に利用されたのね。」

「Aさんに告発させる事が目的だったのよ。」

だそうです…

 

 

 

 

 

上には上が居るものだ…

 

ママから この話を聞いた時は、私もYも

改めてMさんの凄さを知り、感動?してしまいました。

機会が あれば是非、お会いしてみたいものです。

 

 

 

 

※追記

そういえば ママは、「私の手には負えない」

そう思った時点で、Aさんが告発を決心するように

導く事は出来なかったと思う、と言っていました。

私からすれば、ママも十分に凄い方なんですけどね…

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