願い

ある保育園の保育士さんと園長先生からの相談でした。

相談内容は 一人の園児が 外で運動する時間に 必ず 道路に面した場所にある 花壇の前にしゃがみ込み 向う側 ( 車道 )を覗きながら 誰かと話をしていて それが原因なのか 最近 その子の体調が良くない というものでした。

 

体調が良くないと言っても 重病とかでは無く ちょこちょこ熱を出すとか 風邪を引きやすくなったとかで それほど 深刻ではないとの事でした。

 

 

園長室から運動をする広場が見えたので その園児は今日は来てますか?と訊ねたら 来てますという事でしたので 様子を見させて下さいとお願いし その時間まで 私は紙吹雪を作る お手伝いをしながら 待っていました。( 4歳の子達が 手で 折り紙を小さく千切って作っていたものです。 )

 

そして 保育士さんに呼ばれ 子供達にお別れすると 園長室へ移動し 道路に面した窓から 問題の園児の様子を伺っていると 迷う事無く 一直線に 花壇に駆け寄る 一人の女の子を見付け あの子ですか?と聞くと はい。と返されたので 私は その子の様子を暫く見ていて 保育士さんに 直ぐにあの女の子をここに連れてくる様に言いました。

 

保育士さんは 分かりました。といい 園長室を出て行き 程なく 女の子に寄り添う様にしゃがみ 女の子の手を引いて 此方に 歩いて来ました。

 

その場を離れる前に 女の子が花壇の方に 手を振る仕草をしたので 園長先生に あの子の母親を呼んで下さい。と告げました。

 

園長先生は 顔を強張らせ 「何か悪い事ですか?」と 聞いてきたので 私は 「お祓いが必要です。」と告げました。

園長先生は 強張らせた顔のまま 保護者の方へ連絡を入れていました。

 

園児の名前は さおりちゃん ( 仮名 )。

園長先生に入って来たかと思ったら 保育士さんの足にしがみついて 隠れてしまいました。

保育士さんが 「このおばちゃんは 怖くないよ?大丈夫だよ。」と宥めますが さおりちゃんは 顔すら出しませんでした。

 

園長先生が 「20分後に此方に来られるそうです。」と言い さおりちゃんに 「どうしたの?怖くないよ?」と話し掛けますが さおりちゃんは 保育士さんにしがみついたままでした。

 

園長先生は そんな さおりちゃんの態度を見ていて 私に 「大丈夫でしょうか?」というので 「大丈夫ですよ。」と 答えました。

 

窓の外を見た 園長先生が 「来られましたよ。」と言い 2分くらいして 園長室のドアがノックされました。

 

さおりちゃんのお母さんは 少し動揺していましたが 家庭内でも 不思議な行動をしてる時があって 思い当たる事が あった様で 保育園での出来事も園長先生から 告げられると さおりちゃんのお母さんは さおりちゃんに 「 誰と お話してたの?」と聞きました。

 

さおりちゃんは 「 お友達…。」と答えた後 私の方を向き 「あの おばちゃん 怖い。」と言って お母さんにしがみついていました。

 

私は 「さおりちゃんだけでなく お母さんもお祓いを受けて下さい。これから 寺院へ移動しますが お母さんの車は 此方に置いて行きます。園長先生 暫く 車は止めさせて置いて下さい。 迎えの車を呼びますので そちらで向かいます。」

 

そう言って 寺院に連絡を入れました。

車を待つ間 お母さんに数珠を渡し さおりちゃんの左肩から 背中を撫でる様に 言いました。

 

お母さんは戸惑いながらも 数珠を持ち さおりちゃんの 左肩から背中を撫でました。

すると ビクッとさおりちゃんの体が動き 数珠を持つ 母親の手を 払い除けようとする仕草をしました。

 

私は お母さんに 「続けて下さい。」というと また さおりちゃんの背中を撫で それを 数回繰り返した所で 寺院から 迎えの車が来ました。

 

そして 私は さおりちゃんを抱き抱え お母さんにも車に乗るように 促しました。

さおりちゃんは イヤイヤと頭を振り 暴れます。それでも 私は さおりちゃんを抱いたまま 車に乗り込み 寺院へ急ぎました。

 

お母さんは オロオロしていて 「何がどうなってるんですか?説明して下さい !! 」 といいましたが 後部座席に乗っていた 寺院の関係者に 「今 お話出来る状態では有りません。寺院にて お祓いをうけた後 紫雲が お話すると思いますので。」と母親を宥める声が 聴こえて来ました。

 

さおりちゃんは 車に乗っても 暴れ続け 泣き叫んでいました。

寺院が近付くに連れ さおりちゃんの声が 野太い男性の声に 変わりつつありました。

 

それを聞いた 母親は 凍りついた顔をして ガタガタと震えていました。

そして……周りに聞こえるか 聞こえないかぐらいの声で 「まさか……… 」と言った後 黙り込んでしまいました。

 

寺院に着く直前 さおりちゃんの口を借りて出てきた言葉は 完全に大人の男性の声で 「俺は 諦めないからなっ!!」といい さおりちゃんは 意識を失いました。

 

門をくぐり 直ぐに本堂へ行き さおりちゃんとさおりちゃんのお母さんにお祓いをして貰いました。( 私は 暴れるさおりちゃんを抱えていて 体力が消耗していたので 代わって貰いました。 )

 

汗で 顔に髪の毛がくっついていたので 塩白湯を用意させ さおりちゃんの顔を拭いてあげた後 母親にも 同じ物を出し 顔を拭いて頂きました。

 

奥座敷に布団を敷き お祓いが終わった後 さおりちゃんを寝かせて 私は 母親と向き合い話をしました。

 

 

私 「お母さんは 気付かれていますよね?さおりちゃんに憑いた男性が誰なのか?」

 

母親 「元夫の……祖父で…す。」

 

私 「ええ。さおりちゃんにしてみたら お祖父ちゃんですよね?そして……お祖父ちゃんは さおりちゃんをとても可愛がっていた。」

 

母親 「はい…とても可愛がってくれました。でも 夫の浮気で 私から離婚を申し出て……。」

 

私 「離婚した後 お祖父ちゃんにさおりちゃんを会わせなかったのですか?」

 

母親 「夫が実家に帰った事は 分かっていたので…鉢合わせるのも嫌でしたし……他の女を触った手で さおりを触られたら…と思ったら…行きにくくて…。」

 

私 「夫婦間の事 私が口を出せる立場では無いけど お祖父ちゃんには 会わせて良かったんじゃ無いですか?」

 

母親 「………………。」

 

私 「貴女が嫌だったのは旦那さんで お祖父ちゃんでは無かったはずですよね?」

 

母親 「さおりが逢いたがったら 会わせようかと思っていました。」

 

私 「でも…もう 普通には合わせられないですよ?」

 

母親 「 えっ⁉ それって…どういう…?」

( お母さんは お祖父様の生霊が憑いていたと 思っていた様です。 )

 

私 「残念ですが…お祖父様は 亡くなられてます。」

 

母親 「えっ⁉ だって 元夫がっ!! 」

 

私 「ええ…一定期間だけの様ですよ?後は お祖父様 お一人で 暮らされてました。」

 

母親 「そんな…そんな事……。」

 

私 「前に お祖父様から 連絡有りましたよね?さおりちゃんに会わせて貰えないか?って。 でも 貴女はもし元旦那さんに 会ったらって 考えて 断りましたよね? お祖父様 何度も受話器を手にされてました。だけど しつこいと思われたくなくて 連絡出来ずにいた。 あの保育園の前の道路で 事故があったの ご存知ですよね?」母親 「ええ。保育園から連絡が来ました。」

 

私 「老人が亡くなられた そうです。」

 

母親 「ええっ⁉ まさか それがっ? 」

 

私 「はい。何故?花壇の位置なのか分かりますか? さおりちゃんがしゃがんだ時 目線の先に 何がありますか?」

 

母親 「あの花壇の前……道路ですか?」

 

私 「ええ。その道路に 横たわった お祖父様がいらっしゃった。たまたま それをさおりちゃんが見てしまった。お祖父様は 一目 さおりちゃんの姿を見ようとしていたのかも知れませんね。」

 

母親 「それで…事故に…?」

 

私 「元旦那さんのご実家に行って お仏壇にお線香をあげて来てくれませんか?さおりちゃんを連れて…。」

 

母親 「………はいっ………はいっ。」

 

 

 

その時 奥座敷から さおりちゃんの泣き声が聴こえて来て 母親が 奥座敷に行くと さおりちゃんが 「お友達が…バイバイってぇ…。」と言ってわんわん泣いていました。

 

母親もさおりちゃんを抱いて泣いていました。

 

 

 

 

その後 元旦那さんのご実家に行き お仏壇にお線香をあげ さおりちゃんを見せて来たそうです。

元旦那さんとも 会って 普通に話せたと 言ってました。

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