嘘つき

俺は大学でオカルト系のサークルに入っている。部員は少なくて、全部で5人。部長のA、副部長のB、後はCとDだ。残念ながら、全員男。人が少ない理由はこの辺にあるのかも。ある日、Cが面白そうな話を持ってきた。S県の山中に、それはそれはやばそうな建物があるらしく、そこに写真を取りに行かないか、という。共通して暇人な俺たちは、もちろん行くことにした。写真撮影は当然夜、テントを持って泊り込みで行こう、と盛り上がった。

 

 

 

お目当ての建物は、昔の廃校だった。調べてきた部長の話では、取り壊されることも無く、まったく放置してあるらしい。取り壊そうとすると祟りがあったとか、そんな噂まである。俄然興味が沸く。明るいうちに現地に着く。廃校から少し離れたところにテントを張り、準備は万端。木々に囲まれて自然の中でキャンプ、ってのもたまには良い。夜になるのを待った。

 

 

 

テントで出かける準備をしてた俺ら。外に居た副部長がこんなことを言った。副「おい・・・学校の方から誰か来るぞ・・・?」慌てて外に出ると、確かに学校へ続く道から誰かがくる。懐中電灯の明かりで分かった。ゾンビのようにフラフラ歩いてくればまた怖かったかもしれないが、暗い山道を、こちらに向かって懸命に走ってくる。それは同い年くらいの女の子だった。何か言っている。女の子「たすけ・・・助けて・・・助けてください・・・!!」息を切らしながら、助けを求めてくる女の子。なんというシチュエーション。何事かと聞いてみると、こんなことらしい。大学のサークルで心霊スポットである廃校に来た。3人で廃校を探索してたが、1人が急に動けなくなった。金縛り?窓からこちらのテントの明かりが見えた。1人が付き添い、私が助けを求めに来た。

 

 

 

 

 

 

 

と言っても、何があるか分からないので、副部長と俺がテントで待機、部長、C、Dで廃校に向かうことにした。もちろんカメラを持って。19時10分。3人と女の子が廃校に向かっていった。テントに残るのはちょっと寂しい感じがしたが、副部長と話をして時間を潰した。副「あの子、可愛かったなぁ。」俺「ですねー。ああいう子、好みですよ。」副「どうする?あの子の大学、名前聞かなかったけど女子大とかだったら。」俺「つまり他の2人も女の子。うーん、こんなところで素敵な出会い・・・良いですね。」副「でもさ、幽霊ってきっとあんな感じだよな。」なんか不安なことを言う副部長。あーでもない、こーでもない、といって部長達が戻ってくるのを待った。

 

 

 

部長達がテントに戻ってきた。2人だけで。部長とDだけだった。Dはなにやらぐったりしており、部長が肩を貸していた。これはただ事ではないと感じた副部長と俺。Dをテントに寝かす。気を失ったようだ。真っ青になっている部長から話を聞く。部「やばい・・・やばかった。女の子の連れが居る2階の教室まで行ったが、2人共倒れてた。すぐに駆け寄ったが、そこで何かがきた。」俺「何かって・・・なんです?」部「分からない。何かが後ろから迫って来るのがわかった。Cがすぐに写真を撮ろうと振り返ったが、シャッターを押す前にCの動きが固まった。顔が恐怖に引きつってた。カメラを落としてガクガクと震え始めた。女の子も後ろを見て震えてた。口をパクパクさせて、声も出ないようだった。」副部長と俺にも、部長の恐怖が伝わってきた。何かがいた。何だろう。何がいたんだ?部「背後から迫ってくるものを感じて、俺はこう思った。これは見てはいけない、見たら動けなくなる、と。それをDにも言った。だが少し遅かった。」

 

 

 

俺「女の子とCは完全に見てしまったのですね・・・その何かを。」副「それじゃ、・・・全部で4人か。まだその教室に?」部「あぁ。俺だけじゃ、まだ動けるDを連れ帰るだけで精一杯だった。すまん・・・。」謝る部長。いい加減なサークルだが、部長としての立場もあるのだろう。俺「4人か。行って、連れ帰らないと。その何かは、見なければ平気なんですよね?」部「平気だった。振り返らなければ、戻って来れた。」副「すぐ助けに行こう。でもDだけ置いていけないから・・・お前、ここでDと待っててくれないか?部長と行ってくる。」また蚊帳の外。非常に残念・・・でも、少し安心してしまった俺。まぁ・・・分かるだろ?さすがに怖いからさ。

 

 

 

目的は4人を連れ帰ること。俺はDとテントで待機する。20時10分。Dが気が付く。俺「おい、D、大丈夫か?」D「ん・・・ああああっぁ・・・、あぁ、ここは・・・テントか。オレ、どうやって戻ってきたんだ?」俺「部長が連れ帰って来てくれたよ。なにやら大変なことになっちまったな。今、副部長と2人で4人を助けに行ってる。」俺は部長から聞いた話をする。D「あぁ、そうか・・・そうだ。まったく大変なことに・・・」と、突然Dが驚いた顔をする。D「おい、今、なんていった?部長が・・・?」俺「ん?部長が肩貸して、お前を連れてきた。で、副部長と一緒にまた向かった。落ち着けよ。何か飲むか?」D「バカな・・・ありえない!全員見たんだ。アレを!部長だって見たんだ!」俺「え・・・?」D「Cも女の子も、部長もアレを見て倒れたんだ!オレはなんとか外まで這うように逃げて・・・そこから覚えてない・・・!」

 

 

 

なんてとこだ。俺は霊感がある訳じゃないが、ここは危険だと分かる。何かいる。俺はみんなの名前を呼んでみる。・・・が、返事はない。D「2階の教室にいるのだろうな。」俺「あぁ・・・何か来ても、見なければ、平気・・・だよな?」D「だといいな。6人を探して、早く戻ろう。」不安が高まる。一刻も早くここから帰りたい。2階へ行く。ギシギシと床が鳴る。古い木造建築。風が吹き抜ける。隙間風が不気味な音をたてる。もう、何もかもが怖い。懐中電灯の明かりだけを頼りに進む。D「そこの教室だ。」問題の教室に着いた。あぁ、この中に・・・もう逃げ出したい。

 

 

 

机や椅子はほとんど無い。閑散とした教室。部屋の真ん中辺りに、何人が倒れている。見覚えのある服装だ。背後からの気配は・・・まだ、ない。Dが居るだけだ。俺は倒れている人の元へ、ゆっくりと近づいて行った。そこで、ふと窓の外を見た。辺りは真っ暗だ。月明かりのみ。他には何も見えない。木々に隠されて、点けたままのテントの明かりも見えない。見えない。見えない・・・?明かりは・・・見えない!?俺は気付いた。遅すぎたが、気付いた。

 

 

 

騙された。嘘つきは部長じゃない。いや、部長“だけ”じゃない。ここからはどうやったって、テントの明かりは見えない。女の子は嘘つきだ。女の子の連れは居なかった。そもそも女の子なんて、居なかった。倒れてるのは、俺の知っている3人だけだ。部長も嘘つきだ。そして、当然、Dも・・・嘘つきだ。今、俺の後ろに居るDも。何か聞こえる。子供の笑い声だ。楽しそうな声。いや、狂ってるようにも聞こえる声だ。俺はこれから、どうすればいい?誰か教えてくれ。20時38分。Dがそっと、俺の肩に手を置いた。俺の時間はここで終わる。

               

                                                                                                                                                                                                                                               

                                                                                               

 

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