大水難

 

それでも1週間ほどは何も起こらずに

排水溝も業者に点検を依頼していたんですが

ある夜、洗面所で歯磨きをしていた弟が急に悲鳴を上げて

家族の居る部屋へ逃げて来たそうです

泣きじゃくる弟をなだめて、何があったのかを家族が聞くと

洗面台の鏡にずぶ濡れの髪の長い女が映って居たとのこと

「そんな馬鹿な事があるわけない」と、家族全員で洗面所に行くと

そんな女は何処にも居なかったものの

洗面台の下に長い髪が数本散らばって居たそうです

 

水を張っていないはずの浴槽から、排水する音が聞こえたり

例のグチャグチャという音がいつまでも聞こえてきたり

やがてはSさんや両親も、鏡に映る女の姿を見る事になり

大家さんにも「何かおかしい」と相談をしたものの

「そんな曰くは無い」と言う事で

奇怪な音に怯えて不安定な生活を送る毎日だったそうです

そんな生活が続いたある日

アパートに居られなくなるような決定的な事が起こりました

 

やがてゴボゴボという音の後に

水を吸った「何か」が床に落ちるようなドチャッという音がして

足音のようなそれが近づいて来た頃

玄関のドアが勢いよく開かれました

息を切らして家に着いた父親は、3人の姿を見ると

何が起こったのかを確かめるように、母親の抑止も聞かずに風呂場へ直行しました

そしてすぐに小さな悲鳴が起こり

「何だこれは」と父親が呟いたそうです

 

荷物の回収や配送は業者に完全に頼み込んで

やっと安心出来るかと思いきや

それだけでは終わりませんでした

 

それからのSさんの住むところについて

親族会議のような形で話し合った結果

親戚宅に居候していては気をつかってしまうし

家族の事を思い出して辛いだろうということで

母方の実家に祖母と同居する事になったそうです

 

心の拠り所となっていた祖母が

自宅の風呂場で溺れて亡くなったのです

高齢者が風呂場で亡くなる事自体は珍しく無いとはいえ

両親も弟も水の事故で亡くしているSさんにとっては

耐え難い衝撃だったでしょう

 

そんな生活がSさんに追い討ちをかけたのか

やがてSさんは毎晩のように悪夢を見るようになりました

その悪夢が最初に話した悪夢と酷似するものでした

Sさんの場合は、それが毎晩進行していって

足音がどんどん近づいて来ていたそうです

心配するN先輩にも「あの足音が側に来たときに自分は死ぬ」と話していたそうです

 

その感触に嫌悪しながらもN先輩は取っ手に手をかけ

勢い良く戸を開けると

そこには体操座りのような格好で頭まで湯の中に沈んだSさんがいたそうです

無我夢中でSさんを引き上げて救急車を呼びましたが

その甲斐も無くSさんもまた、水の中で亡くなったそうです

 

今ではそんなN先輩も悪夢を見てしまうそうで

誰とも口を聞けず、面会もさせてもらえなくなりましたが

N先輩の両親だけがこっそりと

知人の中でも一番仲の良かった私にだけ日記帳を見せてもらえました

そこに書かれた悪夢の話、Sさんの話

そして「呪われた」とか「伝染るかもしれない」という文字が何度も書かれていました

もし私が見た悪夢が、この二人の悪夢と同じものだとすれば

私もN先輩もSさんの一家のように伝染するもので

同じ運命を辿るのでしょうか・・・

話にあったナメクジと髪の長い女は一体何なんでしょうか

そして兵庫在住の方、そのアパートについて何か知っていたら

少しでもいいので教えて下さい

今はとても怖いです           

 

                                                                                                                                                                                                                                               

                                                                                               

 

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