引っ越し前の下見は要注意

 

 

今から16年前、新婚だった私たち夫婦は〇北ニュータウンにある庭付きのテラスハウスを下見にいきました。
まだ新築で駐車場も広く、バイクや車に目がない夫は即決しました。
でも私は違和感を感じました。以前の住人が残していたものがとても不自然といいますか…荒れ果てていたのです。干してどのくらい経ったかわからないわずかな洗濯物やひっくり返った三輪車……
真新しい建物には似つかわしくないほこりっぽさと、雑然と残されたそれらのものはとても不釣り合いでした。
実はその物件はペットは禁止だったのですが
私たちはチワワを内緒で引っ越してきました。引っ越し荷物が片付きしばらくして、夫が洗面所に感応式の照明をとりつけました。
スイッチをつけるのが面倒という理由でした。
やがておかしな事が起こります。
犬がまず狂暴になり、私は鼻に噛まれて流血……そして夜になるとさかんに洗面所の方に向かって吠えるのです。家の中はあまり日も入らず、
私は夫が帰るまでいつも落ち着かない気持ちで過ごしていました。
ある晩二人でテレビを観ていたら……なんと
誰もいない洗面所の証明が灯ったのです!
夫は故障かな?と、その時は気にしませんでしたが、それは何度も続きました。
その度に犬もそちらに向かって唸るのです。

おかしいけれど、どうしようもなくそのままで
暮らすうちに、決定的に理解不可能な事が起こりました。
2階で夜中に眠っていたらなんとドライヤーの
スイッチが勝手に入り鳴り出したのです!!
ドライヤーのスイッチは固く、壁に吊り下げて
あるのですから、あり得ない事態に私たちは
震え上がりながらスイッチを止めてコンセントも外し、眠れぬ夜をすごしました。

さすがに夫も気味わるがりましたが引っ越す気はさらさらなく私は不気味で落ち着かない家で
過ごす事を我慢していましたので、夫婦喧嘩が絶えなくなりました。
庭から夫の投げた剪定鋏がレースのカーテンを
くぐり抜け私の左目スレスレをかすめてゆく事もありました。
食事時も夫の行儀はどんどんひどくなり
クリスマスの料理にランチョンマットを敷いて
さあ…と振りむくと立て膝でマットにボタボタとソースを垂らしながら無言で食べています。
「ソースで汚れるしクリスマスだからちゃんと座らない?」と、声をかけると夫は「だったらこんなもんはじめから敷くなよ!!」と、怒鳴って
マットを乱暴に投げ捨てました。
私は……泣きました。こんなに酷い男だっ

 

た?

やがて転機が訪れました。犬を飼っている事が
大家さんにバレてしまい、やむなく引っ越す事
になったのです。嬉かっです。 
今まで何度か引っ越しの経験があり、大変さは
わかっていましたが、私には何の未練もありませんでした。

新居にある日夫の友人が遊びにきました。
彼はいわゆる霊感があるのかないのか、山で
天狗に会ったとか真面目に話す面白い人です。
久しぶりでひとしきりおしゃべりをした後に
……彼はこんなことをいいだしたのです。

俺、前住んでたとこに急に訪ねたことがあってさ~、で、家ん中電気ついてるから、あ、いるわ!と思って考えたら何もお土産ないから近くのコンビニで色々買って10分位で戻ったらさ~
電気きえてるし、留守だったんだけど……
なんか気持ち悪かった〇〇〇(夫)に聞いたらあの日は夫婦で泊まりで出掛けてたからいるはずないよって言ってたよね……

私は確信しました。あの家には何かがいたと。

数日後に私たち夫婦はその家を訪ねました。
近所の人とは交流があったので夫が特に気のあうと言ってた方から、以前そこに住んでいた人に何があったのか聞き出してきました。

その家族は夫婦と小さな女の子が暮らしていた
そうですが、夫が冬の山道で事故をおこしてしまい、発見に時間がかかったため斜面の下向きになってしまったご遺体のお顔は大きく
腫れ上がり、とても正視できなかったと。
あの下見に行ったときに、何故洗濯物が乱雑に
干されたままであったのか……
ほこりをかぶったさみしげな三輪車。私は理解しました。亡くなってしまったご主人と、小さな子をかかえた奥さまの悲しみ……無念さ……
その家で唯一明るく快適だった洗面所とお風呂場にはきっとご家族の幸せな思い出があったのではないでしょうか

心よりご冥福をお祈りいたします。

 

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