要塞(先生シリーズ)

事の始まりは、今から7年前。怖いってよりは不思議な話なんで、スレ違いかもしれない。しかも無駄に長くなりそうなんで面倒な人はスルーしてね。あの頃の俺は、怖い者知らずの小学生だった。当時、住んでいた土地は山と田んぼが広がるのんびりした所だったよ。誰も家に鍵をせずに外出するようなさ、そんな大らかな所ね。けど俺の場合は飛び跳ねててさ、学校の先生によく注意されたし、親にはよく叱られたのを覚えてるよ。それで当時、俺は同級生2人とつるんで、色々と問題起こしてた。万引きこそはしなかったものの、色々とイタズラしては怒られてたよ。それで本題なんだけど、同じ町内に面白い噂のある家が有った。その家には離れがあってさ、その離れの二階は倉庫になってるんだ。そして、その二階にはプラモや玩具が、大量に積まれてるって。当時はガンプラが流行っててさ、一番欲しい時期だったな。けど買いに行くには、隣街のショッピングセンターまで行くしか無かった。なんせ、何も無い田舎町だからね。それで俺達3人、その離れの家へ忍び込んでみようって話になった。今思い出すとさ、これって立派な犯罪、本当に当時は怖い物なしだな。当日、俺達は近くにある空き地に自転車を止めて、目的の離れの家に向かった。距離にして20メートルくらいかな。さすがに、自転車をその家の前に停めたままは、マズいからね。その家に近づいてみると、母屋にも離れにも人の気配は無かった。それで離れの家の方、ドアが一つあったんで素早く開けて中に。ドアを開けると、すぐ目の前が階段でさ、そのまま俺達3人、昇っていったんだ。

 

 

 

当時、その2階は、まだ何も無い、建築途中の部屋だったんだ。なんて言うのかな、後で聞いたら、20年前に1階だけ部屋を作ったんだけど、2階はいつか作るってことで、長いこと放置されてた状態下も壁も、木が剥き出しでさ、埃が溜まってた。そんな中に、あるわ、あるわ、ガンプラの山!正確には、ガンプラ以外のゾイドや玩具や古いプラモもたくさん有ったけど興味無いし。それより、当時流行ってたガンプラを、3人で奪い合ったりしたよ。つか、人様の物を奪い合うって、あの頃の俺達どうかしてたな。結局さ、小学生の腕じゃ、そんなにたくさんの物を持てないし。それでも一人3個くらい、大きな箱(MGクラス)を運び出して貰っていくことにしたんだ。あんまりたくさん持っていったらマズイしな。それで品定めしてるとさ、冷静になって思い出すんだが、その二階には他にも色々と有った。うん、隅っこの方にさ、大きな、なんていうのかな?本をしまっておく木の入れ物があったんだ。しかしガンプラ目当ての俺達は、そんなものを軽く無視してた。5分くらい品定めして、貰っていく物を3個決め、誰にも見つからず運び出したんだ。だけどさ、さすがにそんな無茶苦茶なことをすれば、バレるわね。さっきも言ったけど、ガンプラなんて買える店は無いし、そんなデカい箱を何個も持ち帰ったら、親だって怪しいと思うに決まってる。案の定、友達の一人の持ち帰ったガンプラが見つかって、追求された。どう考えても、そんなにお小遣い持ってるわけもないしな。それで厳しく追求されて、結局俺達3人がやったのがすぐバレた。俺は親父に思い切り引っぱたかれたよ。それで俺達3家族揃って、その家にお詫びに行くことになったんだ。盗み出したガンプラと、菓子折りを持ってね。

 

 

 

とても物静かな感じで、痩せ気味の人だった。あまり血色のよくない人だったね。つまり、あのプラモの山は、この人の持ち物だったんだな。それで俺達3家族全員、その人に向かって頭を下げて謝罪した。ガンプラと菓子折りを出して、納得いかないのなら親達は全額弁償すると言った。けどその人はさ、子供のしたことだから構わないと言ってくれた。勝手に持ち出したのは良くないけど、謝ってくれたのなら気にしないってね。しかしさ、その代わりにといって、俺達に質問を始めたんだ。聞いてきたのは生年月日だった。そして、それだけでなく、どの時間帯に生まれたかまで詳しく聞くんだ。するとその人はさ、自分の左手の人差し指から小指までの4本を揃えて、掌を見始めたんだ。その掌の上で、親指を移動して、なんだけど意味通じるかな?それで1分くらいかな、その人が掌を見終わった後、俺に声をかけてきたんだ。ガンプラは返さなくていいから、俺だけ明日からここに通いなさいって。明日から、夕飯を食べたらここに来て、勉強を教えると。他の2人もガンプラを返さなくていい、今日はもう帰って良いと。その時は理不尽だと思ったな。ガンプラ返さなくて良いのは嬉しかったけど、なんで俺だけ?その人、実は大学院卒でさ、親は学校の勉強を見てくれると期待してた。俺は俺で、学校の勉強をさせられるのかとうんざりした。けど、その人は学校の勉強じゃない、中国語を教えると言った。なぜガンプラを盗んだ俺が、中国語を勉強することになるのか?俺も親も全く理解できなかったね。しかし、その人は、嫌なら無理強いはしないと言ってた。別に勉強に来なくても、ガンプラは返さなくて良いともね。まぁ、その場は一応OKの返事を出した。退屈でつまらなかったなら、一回きりで行かなければ良いと思ってね。親としてもガンプラ貰ったんだから、一度くらいお付き合いしろ、みたいにね。

 

 

 

中国語の勉強かー、なんて思ってたが、内容は全然違ってた。その人は、まぁ、これからは先生と呼ぶけど、最初に先生は4×4マスを紙に描いた。 □□□□ □□□□ □□□□ □□□□これは何?と俺が聞くと先生は宇宙だよ、と答えた。左上の3×3の9マスの外周が8個これは色々な物事の様子が8通りに分けられるとか、ね。左から3番目の一番下のマスから、時計回りに12進むと右下の角のマスになるよね。それは1年に12ヶ月あることを示している、と。少し高度になると、星の飛ばし方とかね。つまり、これは知ってる人なら知ってるけど、中国の占いの基礎なんだ。当時の先生は、俺に占いを教えようとしてたんだ。先生は若い頃、学生時代に色々な場所に行ってたらしかった。主に占いの勉強の為に偉い先生に会ったり、本を買いに行ったりね。それでお金を貯めて台湾に行って、達人に教えて貰ったりしてた。今思えば、先生の占いの腕前は、とてつもなかった。テレビに出演してるタレント占い師では、足元にも及ばなかったと思う。命理、風水、家相、易学、全てに精通してた。例えば家を見るだけで、どんな人達が住んでるか、どんな生活をしているかまで、正確に見抜いていた。それは台湾で色々な達人の方に手ほどきして貰ったからだと言ってた。占いという点では、日本は台湾の足元に及ばないのが口癖だった。しかし先生が得意なのは、占いだけじゃない気配もあったんだ。なんていうかさ、占いは表の顔、みたいな感じでね。台湾で学んできたのは、占いだけじゃ無かったような、俺の勘だけど。

 

 

 

まぁ、時々、ガンプラをくれるからって下心もあったしね。それである時、俺は先生に、あの部屋はお宝だらけだね、と言った。そんなに凄いお宝を見つけたかい、と先生は聞き返した。あれだけガンプラがあれば最高じゃん、と答えた。そんな俺に先生は笑ってたんだけどさ、うん、確かにガンプラもお宝だね、と。先生一人でお宝独り占め良いなぁ、と言うと、それは違うと言われた。あそこにあるプラモや玩具は、自分の物じゃない、と。じゃ、誰のかと聞くと、先生は笑って誤魔化してしまった。普通の泥棒だったら怒るかもしれないけど、子供達だから許してくれた、と。先生が許してくれたんでしょ、と聞くとそうじゃなかった。そう言うと先生は、棚から2つの赤い木片を取り出した。それはポエという物だと教えてくれた。三日月を不恰好にしたような形の木、うん、下手な説明だな。それを投げたら、子供達を許すって、結果が出たらしい。当時の俺には、何のことかさっぱりだった。多分、君達だから、この家の敷地内に入ってこれたんだ、と言った。じゃあ、本当の泥棒が来たらどうなるか、と聞いたら、入れないだろう、と。この家は見た目は普通だけど、実は要塞だからね、と笑っていた。塀も無ければ鍵もかけない家なのに、と訳が分からなかった。そんな生半可な対策じゃないよ、と先生は言った。例えば、この家で最も守りが堅いのは、あの離れ2階と先生の部屋と言った。特に、あの2階は厳重に守られている、と。たとえ世界一の泥棒だろうと、あの2階だけは絶対に破られないと先生は言った。小学生が簡単に入れる2階なのにね。

 

 

 

そして、泥棒はどれだけ壁を越えても越えても壁が続き、閉じ込められる、と。俺には、何のことだか、さっぱり分からなかった。確かに離れ2階は広かったけど、それでも普通の家と同じくらいの広さだ。しかも壁に囲まれるような仕掛けは、どこにも無かった。はぁ?と、首をかしげる俺に、先生は最初の勉強で教えたろう、と。あの4×4マスの図が答えだと言った。ますます訳の分からない俺に、先生は笑いながら言ったんだ。勉強すれば、君にも分かる日が来るよ、と。しかし、今思えば不思議な家だったね。あの地区ってさ、時々、空き巣が発生するんだよ。大抵の家は何らかの空き巣の被害に遭ったけど、先生の家だけは無かったんだ。別にボロボロの家だからとか、お化け屋敷とか、じゃなく普通の家なのに。それに、よく鳥が集まる家だったな。あの一帯の集落、電線はそこかしこにあるのに、なぜか先生の家近くの電線に集まってる。それで色んな鳥の巣なんかも、よく作られてた。んー、長いだけで意味不明で面白くない話だったね。しかもあんまり不思議じゃないし、当然怖くも無い。」全部、ワープロで打ってから恥ずかしくなってきた、すまない。

 

                                                                                                                                                                                                                                               

                                                                                               

 

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