遠吠え

田舎の大学の寮生活がいやになり、3年生になった年に大学から原チャリで10分くらいのところにあるぼろアパートに引越しした。2階建ての田んぼに囲まれたアパートの2階。隣は同じ地元出身の友達。これから楽しい一人暮らしが始まる予定だったわけ。寮生活のときは、食事なんか気にしなくてよかったんだけど、一人暮らしとなれば一応自炊もしなければいけない。春のぽかぽか日和だったので、歩いてスーパーへ買い物に行く事にした。大きな公園と公園の間の道をとことこ歩いてスーパーへ向かった。公園の奥には大きな桜の木が何本もあって桜がきれいだった。春休みなのに、公園にはひとっこ一人いない。まぁ、田舎だし。ブランコと滑り台しかないし。買い物を済ませてまた同じ道を歩いて帰る途中、「ワワワワワワ~~~~ン」「ワワワワワワ~~~~~ン」とカン高い犬の遠吠えが聞こえてきた。耳を刺すようなカン高い犬の声・・・・よくみると、公園の奥のほうにある桜の木の下に白っぽいワンピースを着た女の人が俺に背中を向けるかたちでユラユラと立っていた。歩きながら目はそちらへ釘付け。「ワワワワワ~~~~~ン ワ~~~~~~ン」女が吠えていた。超カン高い声で。すると、後ろでいきなり声がした「あんまり、みんほうがいいよ。」振り返ると、買い物袋を下げたおばさんが奇妙な笑いのような怒りのような複雑な顔で「じろじろみんほうがいいよ。」と言いながら早足で俺を追い抜かしていった。(たしかに。あんまり見ると失礼だな。)そう思って俺も視線をそらし、ぼろアパートに帰った。

 

 

 

アパートの2階の部屋にたどりつき、息を切らせながらとりあえず鍵とチェーンをかけた。追ってきてたのかは定かではなかったけれど、とにかく、尋常じゃないほど俺は怯えていた。しばらく息をひそめ、外の様子に聞き耳をたててじっとしていた。30分くらいたったかな。玄関の外には人の気配なし。窓から外を見渡すが人の気配なし。(俺はアホか。ビビリめ。)もう夕方。とりあえず、カップラーメンを食って片付け(引っ越してきたばかりだったので)をぼちぼちやっているとあっという間に時間はたっていた。夜10時くらいだったかな。疲れたので寝ることに。ちょうどそのとき、隣の友人がバイトから帰ってきて玄関を開ける音がしていた。ドスドスドス。部屋を歩く音は意外と響く。俺は隣の部屋に友人がいるという安心感と昼間の猛ダッシュの疲れからいつの間にか眠っていた。

 

 

 

「パンっ」遠吠えと同時に寝ていた俺の顔の前で誰かが手を叩いたような感覚で目を覚ました。しばらく、何が起こったのかわからなくて目をあけてボンヤリしていた。(今、遠吠え聞こえたっけ?夢?)すると、また「ワワワワワワ~~~~~~ン」と声がはっきりと聞こえた。あれが きた。そう思った。玄関の鍵は閉めたはず。とにかく、横になったまま玄関のほうを見た。1Kの狭い部屋だから玄関は丸見え。小さなキッチンが横についているだけ。当然真っ暗なので玄関はキッチンの窓から漏れる外の廊下の光でぼんやり見えるだけだった。カン カン カン カン・・・・アパートの階段を誰かが上ってくる。俺はいつでも布団を頭からかぶる準備をしつつ目は玄関のほうを凝視していた。何時だろう。。時計がない。。。携帯どこだっけ。。。あ、キッチン台の上だ。。。時間を確かめたかったが、恐怖で半分金縛り状態だったため布団を出て2、3歩歩けば手が届く距離にある携帯をとりに行くことすらできなかった。どれだけ時間がたっただろう。5分か?10分か?30分か?階段を上る音は聞こえたがそのあといっこうに物音はしない。(俺は寝ぼけていたのか)そう思い、ソロリソロリと布団を這い出し忍び足で1歩2歩 携帯に手をのばし・・・・・・ふとキッチン前の窓を見ると人影があった。

 

 

 

黒い影が廊下の光に照らされてすりガラスの窓にうつっていた。俺は携帯に手を伸ばした状態で かたまっていた。動いてはいけない。影と俺の距離は壁を隔ててほんの1メートル。影はゆっくりとこちらを向く。このままではやばいぞ!根性を見せろ!俺!勇気を出して俺は・・・スローモーションで携帯を取り1歩 2歩下がり安全地帯(布団の中)に戻るシュミレーションを頭の中で繰り返し実行に移した。1歩 2歩ゆっくり後ずさりしていたそのときぼろアパートの床がギィと鳴った。俺は、とにかくすばやく静かに布団の中にもぐりこんだ。心臓がバクバク。あいつに気づかれたか!息をととのえて布団からそっと顔を出してキッチンの窓を見てみた。誰もいない。影がない。ふと、携帯を見ると時間は3時。次の瞬間  カチャ・・・・ カチャ・・・・・ カチャ・・・・誰かがドアノブをまわす音がする。ガチャガチャガチャっと乱暴にまわすのではなく、非常に静かに上品?に。もう限界。俺は布団の中で携帯を開き、隣に住む友人に電話をかけた。

 

 

 

たった、2,3回ボタンを押せばかけれるのに手がブルブル震えて思ったように指が動かなかった。やっとのことで友人にコールする。呼び出し音はしているが、隣の部屋からは携帯の鳴る音すら聞こえない。マナーモドにしているのか。。。聞こえるのは玄関の カチャ・・・カチャ・・・・カチャ・・・・どれくらい時間がたっただろう。そのうちドアノブの音はしなくなった。俺はひたすら布団のなかでじっとしていた。パタンと音がした。あいつ、たぶん郵便受から中を覗いていたんだ。なにしろ古いつくりだから、郵便受のカバーなんかないし、外から開けてみると中は丸見え。そのうち遠くのほうで「ワワワワワ~~~~~~ン」と遠吠えが聞こえた。階段を下りてゆく音はしなかったがあいつが遠ざかったと確信した瞬間、俺は安堵と疲れと睡魔に襲われ眠りについていた。

 

 

 

3日目は隣の友人宅に泊まることにした。友人は「バイトも休みだし。今夜は飲むか~」と快く了承してくれた。貧乏学生なので芋焼酎をちびちび飲んでいた。程よく二人とも酔っ払い、俺もあいつのことはすっかり忘れていた。ところが、夜中1時すぎに「ワワワワワワ~~~~~~ン」あいつだ。隣で半分寝かかって転がっていた友人をゆすり起こした。友人は「ん?」と目をぱちぱちさせながらぼんやりしていた。俺「きたきたきた」俺が聞き耳をたててじっとしている様子をみた友人は、同じくじっとして聞き耳を立てていた。そのうちカン カン カン カン・・・・友人は驚いたような興味津々な目で俺を見つめる。(しまった。電気けしときゃ~よかった)そして、黒い影がぼんやりとキッチンの窓に映った。その影は友人宅を通り過ぎて隣の俺の部屋のほうへ行ったように見えた。息をひそめて友人は玄関のほうへ様子を伺いにいく。やめときゃいいのに。そ~~と歩いてもぼろアパートの床がきしむ音は容赦なく響いた。玄関前で聞き耳をたてて息を潜めている友人。俺もその姿を部屋から見守っていた。

 

 

 

思い起こせば、「あんまみんほうがいいよ」って通りがかりのおばさんが言ったっけ。目があったから俺のところにきたのか?友人が覗いた先にあったものは遠吠え女の目だったのか。とにかく、あれはいったいなんなのか・・・人間なのか、幽霊なのか。。時間があるときに続きを書きます。仕事に行ってきます。

               

                                                                                                                                                                                                                                               

                                                                                               

 

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